オープンソースソフトウェアの育て方

オープンソースソフトウェアの育て方

オープンソースソフトウェアの育て方

「ほとんどのフリーソフトウェアプロジェクトは失敗します」という言葉で始まるこの本を読んで、いろいろと感じるところがあったので、ちょっと感想など書いてみたいと思います。

# ちなみに、この本は、 http://producingoss.com/ja/ でも読むことができます。また、http://producingoss.com/ja/ja-support.htmlで、いろいろな形式でダウンロードすることもできます。

まず、実感したのは、オープンソースでソフトウェアを始めるのはとても簡単だけれども、それを続けていくというのは、至難の業だという点です。この本によると、約90%から95%のプロジェクトが失敗に終わっているそうです。その理由は、オープンソースのソフトェアは、会社の業務で行うソフトウェア開発の困難な点はそのままで、さらに、多くの課題を解決する必要があるためなのです。

この本にでてくる様々なツール(バージョン管理ツールやメーリングリストの管理ツールなど)の説明は、多少情報が古くなっていますが、何が必要かという点では有用です。現在では、オープンソースプロジェクトホスティングのサイトも進化しているので、ツールの調達という意味では、だいぶ、楽になってきていると思います。

ただ、この本に書かれている大半は、ツールなどの技術的な側面ではなく、コミュニティーの運営という社会的な側面です。この視点から見ると、現在、僕が所属している「日本Androidの会」の活動という意味で、とても参考になるところがありました。

たとえば、第2章の「うまく引っ張っていく」の章では、「メーリングリストでのやり取りを有益で前向きなものに保つ」、「早いうちに協力的なムードを作り上げる」、「個人的な議論をさける」、「炎上を阻止する」や、「広報」に対する重要性などは、ソフトウェア開発を中心としていない、日本Androidの会の運営にもよく当てはまると感じました。

また、4章の「プロジェクトの政治的構造と社会構造」という章では、「プロジェクトはどういう仕組みで動くの?プロジェクトを維持しているものはなに?誰に決定権があるの?」という質問に答えようとしています。
オープンソースプロジェクトで重要なことは、「プロジェクトが分裂することをさける」ということです。この視点は、オープンソース的にみると一見矛盾しているようですが、この章を読んでみるといろいろと納得できる点があります。
また、「優しい独裁者(Benevolent Dictator)」と、「合意に基づく民主主義」という二つの構造と、その変化の説明が、なかなか面白かったです。現在、日本Androidの会も、この二つの構造の狭間にいるような感じを受けています。

この後の5章の「お金に関する問題」や、6章「コミュニケーション」、8章「ボランティアの管理」など、社会的な側面の話も、とても参考になる部分が多くありました。

最後に、付録Cについている「なんで自転車置き場の色まで気にしなきゃならないの?」は、自戒の意味をこめて、きちんと読んでおくべきだなぁと感じています。